●アマテラスもスサノオも仏さまの姿あり
伊勢の神さまとしてよく知られている天照大神も大日如来と同一視されてきたし、僧侶がお寺を創建する際、神明宮(伊勢の2柱を祀る社の意味)として一緒に境内にお社が作られてきた経緯がある。天照大神の弟神であるスサノオは最も神仏混淆した神であることは先日の記事でご紹介した通りである。最も古い神である天之御中主神が、現在の神社でその名を得るのは多くの場合、明治以降になってからである。
●元々はお寺だった神社
天之御中主神を祭神として祀る古社として知られるのは千葉神社、秩父神社、水天宮などであるが、実はいずれも明治以前は神仏混淆社、むしろお寺に近い存在であった。明治時代以降、天之御中主神という名を得た神さまは、それ以前に祭っていたのは妙見菩薩、あるいは水天(仏教における水神)であり、明治時代の神仏分離令とともに仏の名が神さまの名前へと変更になったのである。上記の理由から、イザナギ・イザナミ以前に誕生した神さまが主祭神として続いてきた古社はかなり少ない。
一般の日本人が神さまと仏さまを分けて考え始めたのは、わずか150年ほど前だ。もっと言えば日本では神さまと仏さま以外にも陰陽道や道教、近年ではキリスト教などさまざまな教義がごちゃ混ぜになって存在している。ここまで宗教に関して寛容な世界はどこにも存在していないように思う。おかげで、ひとつの神さまは何種類もの神さまと同一視され続け、メモ帳を作らねば分からないほどの分身の術が生まれている。人気のアメノミナカヌシの神さまをお参りしたいのなら、妙見菩薩か水天宮、鬼子母神でも同じご利益が受けられるということになるので、このような考え方は、やっぱり日本人の効率第一の性格から生まれたものなのかもしれない。