「ツイッターでも人事担当者をフォローしていましたが、採用に関する考え方や価値観、学生へのアドバイスは人それぞれ。クラブハウスではそれを一度に聞けるのがいい」(男子学生)

 さらにこの学生は自己PRやガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を一人で練習するルームも開いてみた。すると意外にも見ず知らずの人が複数立ち寄ってくれ、フィードバックももらえたという。

 学生側が能動的に動けるか否かで差がつくのに対し、企業側はオンライン化への適応力が成否のカギを握る。

「これまでにない特徴は、学生主導で進んでいる点です。かつての就活は、優秀な学生と早く接点を持ちたい企業がインターンシップを仕掛け、それに対して学生が動くというように、どちらかというと企業主導でした。でもオンライン化への適応に関してはデジタルネイティブである学生の方が早かった。逆に企業側が切り替えられていないケースも多いです」(谷出さん)

 企業でNGなのは、対面で1時間行っていた説明会を、そのままオンラインに置き換えたり、社員や職場の雰囲気が伝わるような雑談もなしに、いきなり面接を始めるような対応。動画を使いこなしたり、学生の立場に立ってオンライン上での接し方を工夫できる情報感度が求められているという。

 コロナ禍で従来、学生と企業の「偶然の出会い」の場となっていた対面型の合同説明会がなくなった。その結果、知名度の低い中小企業や地方企業がさらに不利になるとも指摘される。

 しかしそんな環境下でも、オンライン化を追い風にしている地方企業もある。長野県上田市に本社を置く電気計測器大手、日置電機もその一つだ。同社は東証1部に上場しているものの、BtoB(企業間取引)企業に共通する地味さが、長年の悩みの種だった。

「これまで都市部の大学の学内ガイダンスに参加しても、消費者向けのBtoC企業のブースには何十人もの学生が列をなしているのに、当社は1人だけ、なんてことが普通でした。知ってもらえさえすれば、人間性を尊重する社風や働きやすさをわかってもらえるのにと、もどかしい思いでした」(教育・採用担当主査の三井正樹さん)

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