「米国の司法長官のなかで飛びぬけてきれいだ」
4月4日、米カリフォルニア州であった民主党の政治集会におけるオバマ大統領の発言が波紋を呼んだ。同州の女性司法長官カマラ・ハリス氏についてこう発言したが、「きれいな女性は社会的にも成功するといった考えにつながりかねないセクハラ発言」とメディアに指摘され、ハリス氏に謝罪することとなったのだ。「アメリカだから」「せっかく美人だとほめているのになんでダメなの?」と思ったあなたは甘いかもしれない。日本でもセクハラのNGラインは日に日に厳しくなっているからだ。
一般的に「セクハラ」とは、他者を不快にさせる性的な言動のことをさす。難しいのは「不快」の定義だ。セクハラは「被害者が不快に思ったかどうか」が判断基準。オバマ発言のように、ほめたつもりでも受け取る側が傷つけばセクハラ発言になりうる。
都内のメーカーで働く40代のA男さんは、30代の女性部下B美さんからメールを受け取った。
「仕事のことで悩んでいます」
A男さんは心配し、何でも相談してほしいと返事をした。しばらくやりとりを続けていると、B美さんは成果が出ないため、自信をなくして体調まで崩してしまっていることが分かった。部下の一大事、励ましてあげたいと思ったA男さんは、平日・休日問わずB美さんを気遣うメールを送るようになった。
「今日は寒いけど体調はどう?」「昨夜は何してた? 眠れた?」
2カ月後、相談もこなくなり、元気になったのかな、と思っていた矢先。A男さんは上司から呼び出された。
「B美さんが君からセクハラを受けているとの報告があった」
寝耳に水の発言に、A男さんの頭は真っ白になった。性的な内容のメールを送ったり、関係を迫ったりしてはいない。それどころか、二人で飲みに行ったことすらない。返信はいつも来ていたのに、B美さんはセクハラだと思っていたなんて…。
「業務に関係のないメールを何度も送ると、セクハラになってしまう可能性があります」
と指摘するのは、ハラスメント防止研修などを行うクオレ・シー・キューブの取締役、古谷紀子氏だ。A男さんのケースは、仕事の相談に乗るだけならよかったのだが、休日に業務と関係のないメールを何度も送ったりしたことで、「プライベートを詮索されている」と思われてしまった。
※AERA 2013年4月29日号