それが近代オリンピックになると、ギリシャだけの祭典にとどまらなくなりました。世界各国から選手が集うことにより、その生命(いのち)のエネルギーの高まりは地球規模に広がることになったのです。そこに関わる地球上の一人ひとりの内なる生命エネルギーは最高潮に達し、この上ないダイナミズムを得ることになります。つまり地球全体の場のエネルギーが高まるのです。それだからこそ、オリンピックの意義は絶大なのだといえます。
ところが、新型コロナウイルス下のオリンピックはどうでしょうか。入国できない選手がいたり、“無観客試合”の可能性もあるといいます。そうでなくても、密を避けての空席だらけでは、盛り上がりに欠けます。生命の躍動、エネルギーの高まりを感じられないオリンピックなど、やらないほうがましです。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2021年3月12日号