「以前は、患者の年齢や瘤の大きさや形、それに加え医師や病院の経験で治療が検討されていました。しかし現在は破裂リスクを測るためにスコア化されたアルゴリズムが欧米と日本から出ており、そのスコアを参考にし、治療すべきかどうかを考えます」

 スコアの決定に使用される情報は、年齢、家族歴、人種や性別に加え、高血圧症などの有無、瘤の大きさや場所、期待される余命などだ。電子カルテにのっている病院もあり、世界的に使用されるスコアとなっている。ただし、破裂リスクが高いからといって必ずしも治療にすすむわけではない。獨協医科大学病院の河本俊介医師は「治療した場合のリスクについても考えなければいけない」と言う。

「脳動脈瘤は場所によって治療の困難さもリスクも大きく異なります。また、高齢だと治療にも体力を要するため、寿命などを考慮すると治療しないほうがいいこともあります。どちらのリスクも考えて経過観察か治療すべきかで悩む場合は、患者さんの希望や医師の技量で選択が分かれます」

■進化する血管内治療、頼みの綱は開頭術

 治療をすることが決まったら、次は治療方法の選択だ。治療方法には、血管内治療と開頭術があるが、近年は血管内治療のウェートが急速に高くなっているという。デバイスの進化により、今までは開頭術でしかできないといわれていた根元の広い動脈瘤や大型の動脈瘤も血管内治療が可能な場合が出てきたからだ。開頭術を専門とする河本医師は、適応になる症例や特徴について説明する。

「今後の開頭術は、カテーテルで到達の難しい部分にあるものや、カテーテル治療には小さすぎるが何らかの理由でどうしても手術が必要なものなど、ある程度特殊な場合に選択されることが多くなっていくでしょう。しかし、そもそも開頭術は瘤の入り口となっている血管の壁の裂け目を寄せて穴のない正常な血管を作り直す治療です。瘤の中にコイルを詰める治療とはコンセプトが違い、長い目でみると再発がまずないという利点は他の何物にも代え難いと思います」

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