週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
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週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
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 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「脳血管疾患治療」の解説を紹介する。

【図解】脳血管疾患治療の選択の流れはこちら

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 脳の血管である脳動脈の一部に瘤状の膨らみができる脳動脈瘤。脳ドックで見つかることが多かったが、近年はめまいや頭痛がといった症状が出た際にMRIをし、見つかることが多い。そのため、若ければ20代で高齢であれば80代で見つかることも。脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を起こし、生命に大きく関わる。

 しかし、脳動脈瘤が見つかったからといって必ずしも治療をするというわけではない。半分以上が経過観察となり、治療の対象になるのは2~3割だ。加齢とともに破裂リスクよりも治療することでからだにダメージを与えるリスクのほうが高くなることもある。ただし、近年は健康寿命が延びて治療も低侵襲化が進んでいるため、治療対象年齢は年々拡大している。

 主な治療法は大きくわけて二つある。ひとつは開頭して瘤の根本をクリップで挟み血液が瘤に流れるのをとめる「開頭術(クリッピング術)」。根治性が高く再発はまずない。もうひとつは膨らんだ瘤部分にコイルを詰め、血液の流入を防ぐコイル塞栓術などの「血管内治療」だ。欧米の学術論文では血管内治療のほうが成績がよく、合併症も少ないという報告があがっている。しかし、日本の開頭術は精度が高いため、必ずしもそうとはいえない。
 
 脳動脈瘤の治療は「破裂リスク」と「治療に伴うリスク」を考慮して決める。脳動脈瘤が破裂して起こるくも膜下出血は約3分の1の人が命を落とす危険性があり、助かったとしても半数以上に後遺症が残るといわれている。そのため、治療をするかしないかを考えるときにはまず破裂リスクを考える。済生会本病院の加治正知医師は説明する。

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