新潟中央病院の山崎昭義医師は、日常生活の支障について「例えば間欠跛行で、300メートルしか歩けないのは困るという人がいる一方、300メートル歩ければ困らないという人もいます。生活様式は人それぞれですから、ライフスタイルなどに合わせて決めましょう。腰部脊柱管狭窄症以外の病気でも同様です」と語る。

■腰の不安定性の有無が術式選択の鍵になる

 手術を受けることが決まれば、次は術式を選択していく。従来法または低侵襲についてはチャートを参照してほしい。侵襲とはからだにかかるさまざまな負荷の総称で、切開サイズや手術時間、輸血量などが該当する。つまり低侵襲とは、手術痕の小ささだけを示すのではないのだ。切開サイズが小さければ術者に見える部分は少なく、高い技術が求められる。

 従来法でも低侵襲でも、手術は神経の圧迫を取り除く「除圧術」と、除圧に加えて背骨を金属などで固定する「除圧固定術」に分けられる。

「すべり症があり、腰に不安定性がある場合は除圧固定術を選択します。除圧固定術は、骨のずれや傾き、背骨が曲がった変形を直すことができます。また、頑固な腰痛があるときにも除圧固定術をおこなっています」(山崎医師)

 ただし、病院や医師によって判断が分かれるケースもある。例えば、腰部脊柱管狭窄症のなかでも、背骨から神経が枝分かれした先の神経根で狭窄が起こる腰椎椎間孔狭窄症などだ。除圧固定術を受けると術後にとりにくくなる姿勢や動作があるため、医師の話をよく聞き、納得して選択することが重要になる。

 首の手術についても、基本的に腰の手術の考え方と共通する。

「首も、神経にまつわる症状があれば手術が検討されます。特に、手足が思うように動かせない、手の筋肉がやせるといった機能障害には要注意です」(小西医師)

 首の手術も大きく分けると除圧術と除圧固定術の二つがあるが、どちらにも属さない2017年に承認された新しい手術もある。椎間板を摘出し可動性を持つ人工物を設置する「頸椎人工椎間板置換術」だ。実施している病院は限られる。

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