打撃もさることながら、現地ではディフェンス力も評価されていた。NPBでは14年間でゴールデングラブ賞を合計8度も受賞しているが、弱点がなかったわけではない。

 城島の捕手守備の大きな特徴は「捕球技術の甘さをカバーする強肩と配球」と言える。

 実際、プロ入り当時から捕球技術の拙さは有名だった。投球が少し荒れると逸らすのが日常茶飯事。「捕手に向いていない」と球界OBから苦言を呈されることも多かった。「キャッチングが一番下手だったのは城島。最後まで上手くならなかった」とダイエー時代にバッテリーを組んだ工藤公康が語っていたのも有名な話だ。

「捕球技術はマイナス部分だったが、捕手としての評価は高かった」と渡米前の城島をマークしていたMLB日本駐在スカウトは振り返る。

「捕球技術を理由に早々と撤退した球団もあった。エース格の投手がスプリットなど、落ちる球を決め球にしていた球団はそうだった。だが真っ直ぐ中心のパワー系や球を少し動かして勝負する投手が多いチームの場合、捕球技術は最重要事項ではない。持ち前の打撃もあり、興味を持つ球団は多かった」

 短所ではなく長所に目を向けた場合、捕球技術は問題にならなかったという。

 1番の長所は“ジョー・バズーカ”と呼ばれる強肩だ。地肩が強く、体勢が崩れても速くて強い球を投げられた。渡米前の01年から4年連続で盗塁阻止率リーグトップ、中でも02年は.508と驚異的な数字だった。そして07年には盗塁阻止率.465とメジャーでもトップの数字を記録した。

「どの球団スカウトも絶賛していた。予備動作がなくても強い送球ができる。肩は中南米選手並だった。渡米してから少し肩を痛めた時期もあり、その時は身体全体を使って、ステップして投げる方法も模索していた。しかし本人もしっくりこなかったようで、元に戻した。現役晩年は肩への蓄積疲労もあったのか、強度も少しずつ下がった。それでもあれだけの肩を持っている捕手はいない」(MLB日本駐在スカウト)

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新たな“捕手像”を作り上げた城島