では、番組をチェックするプロデューサーなどの意識はどうだったのか。また社内にはコンプライアンス推進室もあるが、なぜチェックが働かなかったのか。これらについて日本テレビに問い合わせたが、期日までに回答は得られなかった。

 一連の騒動について、アイヌ民族の集落で暮らす人たちはどう感じているのだろうか。

 北海道で最も大きなアイヌ民族の集落・阿寒湖アイヌコタンで民芸店を営んでいる西田正男さん(75)は「あまりにも認識不足で、残念」と悔しがる。

「(芸人)本人に差別的な意識がなかったとしても、アイヌ民族が昔どういう境遇にあったのかを知っていれば、あのような発言は出ない。過去をしっかり勉強してほしいし、国も積極的に教育してほしい」

 別の民芸店の店主は、「コタンでは、昔からあのような差別表現があったことは知られている。トラウマになっている人も多く、あの言葉を聞いただけで不快に思う人もいます」

 さらにこう続ける。

「(日テレ側は)誰も気が付かなかったというのがそもそもの問題。もし芸人さんが知らなかったとしても、(当該のコーナーは)生放送ではないので、なぜ制作側がチェックできなかったのか。番組に出演していた加藤浩次さんも北海道出身なのに、気がつかなかったのは残念です」

 木彫りなどの民芸品を売る「ニタユンクル」の渡辺澄夫さん(58)は、「今回のことで、若い人が遊び半分であの言葉を出してしまわないか心配」と懸念する。

「本州の人は、アイヌが差別的な扱いを受けてきたことを知らない人はまだまだ多い。小・中学校の教科書でもほんの少し触れるだけで、十分な教育がされていない。日本人も、同じ日本の民族については知らなくてはいけないと思います」

 印象的だったのは、伝統的な刺しゅうなどを売る「クロユリ屋」のフチさん(84)の言葉だ。

「私は倭人で、ご縁があってここに嫁に来ましたが、アイヌの集落の中で、倭人だからと言っていじめられたことは一度もありません。アイヌも倭人も外国の人も、この地球に暮らす人間なのですから、認め合ってほしい」

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「問題は感性が働かなかったこと」