

国軍のクーデター後、戒厳令が発令され、緊迫の度が深まるミャンマー。現地人権団体によると、治安部隊の発砲などで25日までに計320人が殺害された。27日だけで100人以上殺害された、との報道もある。SNSを通じて価値観を共有するZ世代が国境を超え、抵抗運動を支えている。AERA 2021年3月29日号の記事を紹介する。
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クーデターで権力を掌握したミャンマー国軍の武力弾圧は日に日に強まっている。弾圧に反対して、ミャンマー国内外で起きている抗議運動。主役として注目されるのがZ世代だ。
1990年代半ば以降に生まれた10~20代は、ミャンマーでも2013年以降の通信の自由化の流れを享受してきたデジタルネイティブが多い。Z世代の存在が際立ったのは2月1日のクーデター発生からの数週間だ。
市街地の抗議デモで伝統衣装姿やアニメ、映画のキャラクターのコスチュームを身にまとうなど、「SNS映え」する運動を展開。「スパイダーマン」や「鬼滅の刃」のヒロインに扮した斬新なデモは日本や欧米のメディアで盛んに報じられた。
「今回のクーデターで引き起こされた事態によって、ミャンマーのZ世代の能力が最大限に引き出されたと思っています」
こう話すのはミャンマー人の両親のもと、東京で生まれ育ったピォー豊さん(23)だ。
■自由を失うほうが怖い
高校3年生の1年間はヤンゴンのインターナショナルスクールに通い、16~20年に米国の大学に留学した。帰国後、日本でZ世代向けビジネスを支援する広告会社を経営。クーデター後は、ミャンマーのZ世代が集めた情報をインスタグラムにアップする際、共感を得やすいデザインなどにアレンジするブランディングをボランティアで担う。
ピォーさんがミャンマーでデモに参加している同じ年の友人に「怖くないの」と問うと、友人は「もちろん銃は怖いけど、自由を失うほうがもっと怖い」と答えたという。
「その言葉に尽きると思いました。自分たちが選挙で示した民意が無駄になってしまうだけでなく、自分らしくいられる社会を歪められるのが耐えがたい、という思いが彼らをデモの最前線に駆り立てているのだと思います」(ピォーさん)