■分断のツールにもなる
ただ、国軍側もSNSの「利点」を熟知している。今回のクーデター後も国軍はさまざまなフェイクを意図的に流している。こうした状況を踏まえ、SNSに頼る運動は両刃の剣の側面もある、と日下部さんは言う。
「国軍がロヒンギャに対する国民の憎悪をあおった過程でも、ヘイト表現が事実よりも伝わりやすいSNSの特性がフルに活用されました。今回の抗議運動でも市民の連帯だけでなく、分断のツールにもなっています」
不服従運動に参加しない人をリスト化するアプリや、不参加を表明した公務員らの個人情報をさらして誹謗中傷するなど、ネット上での攻撃を呼びかけるFBページがつくられたりしているという。
「デモに参加しない人に社会的制裁を加える動きが市民側に広まっています。共感に訴えるSNSはムードで流され、全体主義的に陥りやすい傾向は否めません」(日下部さん)
短文でやりとりするツイッターやFB、視覚やムードに訴えるインスタグラムは共感を広げるのには適しているが、議論や批判には向いていない、と日下部さんは指摘する。
「今はそれどころではないですが、今後、真の民主化に挑むには、軍政の背後にいる中国やインド、ロシアの問題や、ロヒンギャ問題などで軍に妥協したスーチー政権の検証も深める必要があります。BLM運動の議論の場にもなっているクラブハウスのような新しい音声SNSが普及すれば、Z世代の運動はさらに進化していくのではないでしょうか」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2021年3月29日号
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