「国軍の弾圧に疲弊し、こんな国に生まれなければよかった、とこぼす人もいます。今まで平和な日常を過ごし、日本に留学予定の人もいました。夢や希望が突然、踏みにじられたショックと失望はよくわかります」
署名活動の前にクラウドファンディングで寄付を募ることも検討した。だが、ミャンマーに送金するめどが立たず断念。無力感にさいなまれながらも、「人権を重視する姿勢を示してほしい」と外務省に要請した。だがこうした行動はネットの一部で心ない批判も浴びた。
■海外とつながる強み
「就職活動に有利になると思ったのか」「スーチー派は胡散臭い」「日本を巻き込むな」
署名活動への称賛も少なくないが、批判は先鋭ゆえに目立つ。こんなコメントもあった。
「日本人ってこんなにも冷たい人ばかりか。どうかこれ以上傷つけないでください」
コロナ禍での在日ミャンマー人のデモに対する批判も一部にはある。男性は言う。
「日本語ができるミャンマーの友人は日本のネットやSNSもチェックしています。自国の情勢が大変なのにもかかわらず、2月13日の福島沖の最大震度6強の地震に『日本は大丈夫?』と心配のメッセージを送ってくれる人もいました。今のミャンマーの人たちは国際世論が頼り。日本での何げないつぶやきが、SNSを通じて世界とつながっているZ世代をすごく傷つけることを理解してほしい」
ミャンマーの少数民族ロヒンギャの問題に関する著書のある立教大学の日下部尚徳准教授は、Z世代の運動をこう解説する。
「SNSを通じて情報を瞬時に発信、シェアできる個人のネットワークが海外ともフラットにつながっているのが強み。海外でも同じタイミングでデモを起こせる発信力がある。これはかつての運動と全く異なる」
SNSの影響は、国軍も脅威に感じていると指摘する。
非暴力運動や職場に出勤しない「不服従運動」が広まったこと、ネット上でつながる国際的な民主化運動「ミルクティー同盟」との情報交換などの連携、治安を意図的に悪化させるなど国軍の手口に関する情報のシェア、補給やバリケードなど運動ノウハウのシェア。これらがSNSを通じて市民に浸透した、と見られるからだ。