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 米国の名門ハーバード大学のラムザイヤー教授が慰安婦問題や日本のマイノリティー(少数者)について書いた論文が、国際的に大きな波紋を広げている。「先行研究を無視し文献の扱いが恣意的だ」などとして米国の大学教授や韓国社会から批判の声があがり、日本でも学者らが抗議の緊急声明を発表。論文掲載の撤回を求める声が相次ぐ一方で、日韓の保守・右派からは擁護論も出ている。論争はどのように広がっているのか。

 慰安婦問題をめぐっては、朝日新聞編集委員・北野隆一氏が昨年8月、『朝日新聞の慰安婦報道と裁判』(朝日選書)を出版した。朝日新聞の慰安婦報道に対して右派3グループが朝日新聞社を相手に起こした集団訴訟に加え、米国での慰安婦を象徴する少女像撤去を求める訴訟の顛末も記し、慰安婦問題をめぐる論争が海外でも広がった経緯をたどっている。その北野氏が、今回はラムザイヤー氏の論文をめぐる論争を読み解いた。

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 論文は「太平洋戦争における性行為契約」。経済学のゲーム理論を慰安婦の契約にあてはめ、「高収入が期待される場合にだけ、仕事についた。彼女らは契約期間を終えるか借金を返済して帰郷した」などと書いている。会社法や日本法を専門とするハーバード大法科大学院(ロースクール)のJ・マーク・ラムザイヤー教授が執筆。オランダの出版社エルゼビアが編集発行する国際学術誌「法と経済学の国際レビュー」に今年3月刊行予定として昨年12月、同誌サイトに掲載された。

 これに対し、歴史研究者や教育者でつくる歴史学研究会や歴史科学協議会、歴史教育者協議会と、慰安婦問題に取り組む市民団体「Fight for Justice」の計4団体は3月10日、緊急声明を発表した。「先行研究が無視され、文献の扱いが恣意的で、根拠が示されず主張だけが展開されている」と批判。慰安所制度への「日本軍の主体的な関与を示す数々の史料の存在を無視し、業者と朝鮮人『慰安婦』の契約書を1点も示さず、史料から自説に都合のよい部分のみを使用している」「慰安婦被害と日本の責任をなかったことにしようとしている」として「この論文に学術的価値を認めることができません」と断じた。「法と経済学の国際レビュー」編集部に対して論文の再審査と掲載撤回を求めている。

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