私が心配するのは、国会の会期末までにロックダウンを可能にする法律が整備されないまま、第4波を迎えることだ。変異株が猛威を振るい、ワクチン接種も進まない状況下では、第3波をはるかに超える感染拡大が起きる可能性はかなり高い。その先に待つのは、完全な医療崩壊が起きているのにロックダウンはできず、死亡者は急増、さらに、コロナ以外の患者の治療も行えない地獄絵。医療崩壊から社会崩壊にまで進む事態だ。

 菅総理は、いつGo Toを再開するか、五輪で日本人観客をどれくらい入れるかで頭を悩ませているようだ。それがわかっている官僚たちは、「最悪に備えてロックダウンの準備をしましょう」などとは言えない。そんなことをしたら夏の人事で飛ばされる。その恐怖感で官僚たちは萎縮し、アリバイ作りに汲々とする。

 菅総理の思い込みと頑迷さ、そして、官僚支配の恐怖によって、官僚の思考停止が続き、コロナが始まってから1年以上経つのに、いまだに最悪を想定した対応策がほぼゼロの事態が生じている。そんな国は日本だけだろう。これこそ国民にとって、最大のリスクではないだろうか。

週刊朝日  2021年4月9日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)など

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