桜の開花が早いのは不吉の前兆。と言ったら怒られるだろうか。
昨年の3月、安倍晋三政権は大きな間違いを犯した。感染拡大が深刻化し、東京などで事実上の医療崩壊が起きる中でも緊急事態宣言を出し渋り、3月下旬の連休で外出が増えて感染爆発となった。桜の開花が早かったのが拍車をかけたと言われた。その後、緊急事態宣言を発出したが、あまりにも遅すぎた。だが、当時の政府の対応について、政府として検証を行うことはしないまま、再び3月を迎えた。
年度末から年度初めの人の移動が増える時期、学校も春休みで、しかも桜の開花が今年も早まった。宣言解除前から人出は増え始め、観光地にも人が増え始めた。誰もがリバウンドを懸念している。その少し前、感染者減少を受けて県独自にGo To イートキャンペーンを実施した宮城県では、感染者が急増して、県独自の緊急事態宣言発出に追い込まれている。こんな前例を目の前にしても、菅総理は21日で緊急事態宣言を解除した。
自粛疲れで宣言の効果が薄れたし、他に手段もないから解除、というのが本音のようだが、それは本末転倒ではないのか。他に手段がなく、切り札のワクチン接種も遅れるのなら、感染爆発に備えた準備をするべきだが、その議論がほとんどない。
「最悪の事態」に対応するために今の法制度で決定的に欠けているのは、強制力を伴う外出制限(ロックダウン)など、個人の行動制限を認める法律と万全な補償措置の備えだ。欧米などには、「最悪の事態」への対応策のお手本がたくさんある。菅総理が指示すれば、人まねが得意な官僚たちが、過去問を解くように欧米流対応策をすぐに書き上げてくれるはず。もちろん、国会の議論には時間が必要だ。だからこそ、急がなければならない。6月16日の今国会会期末までに法案を通すには、今すぐに着手してもギリギリだ。
欧米では、感染拡大のたびに強力なロックダウンをして、ようやく医療崩壊を食い止めてきた。それでもなお、今も変異株でロックダウンを再開する国が続出している。