いわゆる「ライブドア事件」で懲役2年6カ月の実刑を受けたのち、仮釈放の身となったホリエモンこと堀江貴文氏。現在の生活をこう語る。

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 私は仮釈放中の身である。今年の11月9日までは社会で処遇されている受刑者という身分だ。

 だからといって公の場で仕事をしてはいけないというルールはない。私の場合、仮釈放中に守らなければならない遵守事項の中に「仕事をしなさい」というルールが含まれている。講演会をしたりテレビ番組に出演したりするのも仕事の一つで、むしろ積極的に出ていくべきなのである。

 そういった事情もあり、先方からオファーがあればスケジュール次第ではあるが、基本的に受けるようにしている。

 けれど一旦オファーを受けたものの、担当者の独断だったため、後から上層部によって「時期尚早である」とか「仮釈放中はNG」的な理由でキャンセルされることが多い。

 もちろん、そのまま開催されることのほうが多いのではあるが、開催した主催者がその後何かのネガティブな反応をされたとか具体的なデメリットがあったなんて話は聞いたことがない。恐らく「君子危うきに近寄らず」的な発想で仮釈放中の私を自分たちの組織と関連する場に登場させたくないという後ろ向きな考え方なのであろう。

 それはそれで構わないが、私自身はそれなりに傷つく。忙しいスケジュールのなかから、なんとか日程をひねり出しているというのもあるが、無力感のようなものを感じてしまい、やる気を削がれるのである。

 一般の仮釈放中の受刑者は、よほど有名でない限り、情報が外に漏れにくいので差別を受けることはあまりないかもしれない。だけど私の場合は日本人のほとんどが知っているので、このような差別を受けることになるのである。

 恐らくサラリーマン的な気質で余計なことに首を突っ込むのをやめようという流れなのだろうが、それによって得られたはずのアップサイドのポテンシャルを捨ててしまっているのが、今の日本社会のチャレンジしない精神の象徴にも思えてくる。

 もし何かがあったら、自分が責任を取らなければならないというのが嫌なのだろう。そういう人間たちが減点主義の日本の大手企業の中で幅を利かせている。つまり一回でも失敗をすると出世のレールから外されてしまう恐怖が、チャレンジする精神を阻害しているということなのだろう。

 言っちゃ悪いが、私は今日本でいちばん法令遵守についてセンシティブな人間だと思う。ライブドア事件の一連の流れで、少しでも疑わしい行動を取れば容赦なく権力は摘発をしてくるというのが痛いほどわかったので、かなり慎重に法令チェックを徹底している。

 一度も摘発を食らったことのない人たちを端から眺めていると「危ないなあ」と思うことも一度や二度ではない。むしろ慎重な人間であることを本当に理解してほしいと思うのである。

 と、キャンセルを食らったり、今は駄目ですと言われたりして、自分の力不足を認識してしまって本当につらい現在の状況なのである。11月の刑期満了後、どのような雰囲気になっているのかが気になるところだ。

週刊朝日 2013年5月31日号