面をかぶることは「人」でなくなること、神の力を憑依させることをあらわしている。そして、「日」のエネルギーを含んだ材料、鍛刀に使う「火」も、神的パワーそのものなのだ。

■気性の荒い刀鍛冶の男たち

 鋼鐵塚蛍は、気難しい人物で、刀を破損・紛失した際には、包丁を持って追いかけまわすような人物である。同じ刀鍛冶の鉄穴森鋼蔵(かなもり・こうぞう)が、「この人剣士さんに嫌われて 担当外れること 多かったからね」と説明している。また、鋼鐵塚は、そのかんしゃくが過ぎることから、なんと2歳の幼さで、実親が彼を手放し、師・鉄地河原鉄珍(てっちかわはら・てっちん)に預けられている。

 そんな性格なのは鋼鐵塚だけかと思えば、育て親の鉄珍も、女好きのユニークな描写がされた直後に、「折れるような鈍(なまくら)を作ったあの子が悪いのや」と言い、鍛刀において誰よりも厳しい姿勢をみせる。

 また、鉄穴森ですらも、嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)が刀をわざと刃こぼれさせると、怒りで我を忘れる。たった10歳の刀鍛冶・小鉄(こてつ)少年も、とても口が悪く、鬼殺隊「柱」である時透無一郎(ときとう・むいちろう)のことを「あの澄ました顔の糞ガキ」と言い放つくらいに、気が強い。

 このように刀鍛冶の男は、かなり気性が荒いことがわかる。「惡鬼滅殺(あっきめっさつ)」の文字が刻まれるような、鬼狩りを目的とした武具を作るということは、ふつうの胆力、精神力ではないのだ。

■どの刀を誰が作ったのか?

 鋼鐵塚は炭治郎の刀を作った。その師・鉄珍は、恋柱・甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)の薄く、柔らかく、長い、「桜色のしなる刀」の制作者だ。彼は、甘露寺の刀だけでなく、蟲柱・胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)の打突に向いた特殊な刀も担当している。この細い剣のデザインは、一見すると胡蝶の小柄さ・非力さに合わせただけのように見えるが、剣先には猛毒が仕込まれている、クセのある刀剣だ。

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時透無一郎の日輪刀に込めた思い