不正に揺れる笠松競馬場(C)朝日新聞社
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引退後、17年ぶりに姿を見せたオグリキャップ(C)朝日新聞社
引退後、17年ぶりに姿を見せたオグリキャップ(C)朝日新聞社

 笠松競馬場(岐阜県羽島郡笠松町)の騎手や調教師らの不正やセクハラが指摘されていた問題で4月1日、「笠松競馬不適切事案検討委員会」がまとめた報告書には、仰天の真実が生々しく記されていた。

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 55ページにも記された報告書では騎手、調教師らがグループで競馬法で禁じられている馬券を購入し、的中した利益、1億4千万円あまりを申告していなかった「脱税」について認定。これまで報じられていなかったセクハラが常態化していたことも記されていた。

 オグリキャップをはじめ、数々の名馬を送り出してきた笠松競馬場はいま、存続の岐路に立っている。

 昨年6月に岐阜県警が強制捜査に着手していた競馬法違反事件は、2012年から騎手や調教師が馬の情報を共有するグループを作り、不正に馬券を購入。2020年6月まで続き、関与した騎手や調教師は昨年夏に引退した4名を含めて10名に上る。うち6名は、現在も笠松競馬場に在籍する現役の騎手、調教師だ。

 不正馬券による収益は1億4千万円に上り、その手口はグループ購入した馬券を現役のA調教師の妻名義の口座で管理。委員会は報告書でグループ購入の実態や収益について以下のように記している。

<2012年からグループ購入を開始、2020年6月まで継続的に行われた>

<グループ購入の馬券は、B元調教師とC騎手を中心に行われていた>

<馬券をグループで購入する際には、他の騎手に騎乗する馬の調子を聞く等の情報収集が行われた。(中略)特に必要としていた情報は馬の悪い調子に関する情報>

<グループ購入する際の馬券の種類は、主に配当の高い3連単>

 そしてグループ購入の打ち合わせは「調整ルーム」で行われていたという。騎手はレース前日から「調整ルーム」に泊まり込みとなる。これはレース直前の公正を防ぐため、外部との接触を断つ意味がある。地方競馬もJRA(日本中央競馬会)も同じルールとなっている。

 その際、騎手は携帯電話など外部と連絡が取れるものの持ち込みは厳禁。しかし、笠松競馬場では荷物検査などは実施しておらず、騎手は電話を持ち込んでいたという。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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馬券のため、騎手らが馬の情報を交換