普段、彼を指名する客は28歳~60歳と年齢層が幅広く、性的サービスなしで利用する客も多いという。先日も1日貸し切りをした客と泊まりがけでテーマパークへ行ってきたそうだ。料金は15万円と、決して安価ではない。だが、繰り返し利用する女性の心情は決して理解し難いものではなかった。

 性的サービス以外の面でも、歩くスピードや会話の内容など、細かいところから終始女性側のペースや好みに合わせてくれる。普段、一般の男性とデートなどをする際は、食事をする店や会話の内容など全てにおいて互いに歩み寄らなくてはならない。しかし、この時間は男性と過ごしながらも自分らしくいられる気がする。もしかしたら"寂しい人"に思われてしまったかもしれないが、どんな話も肯定的に聞きながら寄り添ってくれる男性というのは心強くあたたかかった。

 コロナ禍でありながらも女性向け風俗に需要がある理由について尋ねてみた。すると彼は「外に出かけづらい状況で、娯楽のひとつとして使っていただいているという印象です。ホテルとか閉鎖された空間で二人で楽しめるサービスなので、大勢の人がいるような場面にならないという点では、安心感があるのかもしれません」とにこやかに答えてくれた。

 帰りは手を繋いで待ち合わせた場所まで二人で歩いた。「本当にどこにでもいるカップルのようだな」と、ほっこりとした気分。あくまでも「疑似」ではあるのだが。

 男性向け風俗には自分の性的欲求を処理したいという目的のみで来る客が大半だと聞くが、女性向け風俗に行く客は、理想の彼氏像のようなものを現実化してくれる彼らとのひとときに癒しを求めているのだろう。人間関係の構築が、以前よりもちょっと難しくなったコロナ禍の今、なおさらかもしれない。

◆妹尾ユウカ
せのお・ゆうか/1997年8月生まれ。一児の母。コラムニスト。ツイッタ-のフォロワー数は7万5千人(2021年4月現在)。