統合失調症は脳の機能がうまく働かなくなり、考えや感情がまとまりにくくなる病気です。およそ100人に1人がかかり、10代後半から30代前半の若い世代に発症しやすいという特徴があります。
榛澤裕一さん(32)は、中学のときに統合失調症を発症して入退院を繰り返しました。現在は、ほぼ症状が見られない安定した状態になり、東邦大学医療センター大森病院メンタルヘルスセンターのデイケア、イルボスコで、若い世代のデイケアを運営する仕事をしています。当時の様子やその後の経過をインタビューで語ってもらいました。前編・後編の2回に分けてお届けします。
(匿名は精神疾患に対する偏見・差別を助長しかねないとの考えのもと、本人の承諾を得て実名で紹介します)
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――榛澤さんが統合失調症を発症したときの状況を教えてください。
中学2年が終わって春休みに入り、学校のスキー教室があったんですね。そのころから夜眠れなくなり、妙にテンションが高くなって友だちに暴言を吐くなど、おかしくなりました。振り返ってみると、その1年くらい前から毎日頭が痛くて食欲がなくなってうつっぽくなったり、簡単な足し算や引き算ができなくなったり、死にたいと思ったこともありました。
でも「振り返ってみればそうだったな」と思い当たる程度で、当時自分ではおかしいと思ったことはなかった。だから母に「病院に行かない?」と言われたときも、「どこも悪くないのに、なぜ病院に行かなくちゃならないの?」と思っていましたね。
まず近所の内科の先生に診てもらったら、心とからだが乖離(かいり)しているから、専門の先生に診てもらったほうがいいと。そう言われても、よくわからなかったです。紹介された大学病院の精神科で診察を受けると、すぐに薬を処方されました。そのときも病気とは思っていないから「なぜ精神科?」「なぜ薬を飲まなければならないの?」と疑問だらけでした。
――精神科を受診するのは抵抗がありましたか?
そうですね。当時、精神科が扱う病名で知っていたのは、うつ病や5月病くらい。精神に問題がある人が行く場所だから、自分にはまったく関係ないと思っていました。