終了。あっけない。校門脇で待っていると、友達と出てきた。「Aくん? お世話になってます。父です」「こちらこそお世話になってます」「二人で写真でも撮る?」と言って、空いてるところに二人を並べて撮影。表情がぎこちない。「息子通じて送るね」「ありがとうございます」。駅までの道のり、二人は勉強のことやら、部活のことやら話しながら。私はどこで昼飯にするかを考えながら。
「Aくんも一緒にごはん行く?」と誘おうかと思ったが、先方も都合があろうと躊躇(ちゅうちょ)して、二人で駅前のファミレスへ。無言で注文を待つ間、「席、坊主頭の子の後ろだったか?」と聞くと「よくわかったね(笑)」だと。「まあ、なんとなくです(照)」と私。
ネタになるようなことは何も無かったが、長男と二人きりで飯を食ったのは中学の入試以来か。3カ月くらいに感じるあっという間の3年。「ごちそうさまでした」と息子、「どういたしまして」と私。二人でぼんやり家路についた。そんな入学式。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中
※週刊朝日 2021年4月30日号