指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第66回は、「『人を残す』ヘッドコーチの役割」。
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日本水泳連盟は4月11日、東京五輪の競泳日本代表選手を発表しました。男子17人、女子16人の計33人。そのうち22人が五輪初出場というフレッシュな顔ぶれです。実力のある選手がそろい、「複数の金メダル獲得、全員の決勝進出」という目標は十分達成可能だと思っています。
10日まで代表選手選考会を兼ねて開かれた日本選手権で派遣標準記録を突破した29人に加えて、選考委員会で協議した結果、男子400メートルリレーで1人、女子800メートルリレーで3人を選びました。33人は前回リオ五輪より1人少ないチーム構成です。
個人種目の五輪代表選手選考の基準が「日本選手権で派遣標準記録を切って2位以内」と明確に定められたのは、2004年アテネ五輪からです。今回、リレーの派遣標準記録を切っていない男女4人の選手を選考した理由について、オンラインの記者会見でも丁寧に説明をしました。
チームとしては複数の金メダルを取ることが最大の目標です。日本選手権の男子200メートル自由形を日本新で制した松元克央は金メダルの有力候補ですが、日本選手権100メートル自由形で2位に入って、400メートルと800メートルのリレーの代表権も獲得しました。五輪は200メートル自由形と400メートルリレーの日程が重なるため、400メートルリレーを辞退。日本選手権100メートル自由形5位の塩浦慎理をリレー要員として代表に選びました。
五輪で金メダルを取るためにはチーム一丸となる必要があります。松元のほかにも、男子200メートル平泳ぎの佐藤翔馬、400メートル個人メドレーの瀬戸大也は金メダルが狙える位置にいます。男子200メートル個人メドレーの萩野公介、女子400メートル個人メドレーの大橋悠依らにも金の可能性があります。目標達成のためにチームの戦略を練って、世界と戦っていく覚悟です。