初の五輪代表が多いチームなので、ベテランの経験をしっかり伝えていきたい。チームのキャプテンは4大会連続で五輪に出場する男子背泳ぎの入江陵介を指名しました。ミーティングでも積極的に話をしてもらっています。松元を指導する鈴木陽二コーチは、1988年ソウル五輪男子100メートル背泳ぎで金メダルを取った前スポーツ庁長官の鈴木大地氏を教えたベテランです。初めて五輪を経験する若手コーチも多いので、過去の五輪の実践や指導のノウハウを受け継ぐ機会にしたいと思っています。
私は指導者として6回目の五輪です。最初は21年前のシドニー五輪で、このとき一緒に教えたコーチの多くが、今回も代表選手を送り出しています。地元開催の東京五輪は若いコーチと役割を分担して、水泳界を担う人を残していくこともヘッドコーチの役目の一つだと考えています。
最後に「指導する7人全員の代表入り」を目指した私自身の日本選手権を振り返ります。萩野、大橋、青木玲緒樹(れおな)、酒井夏海、白井璃緒(りお)の5人が代表に入りましたが、ベテランの小堀勇気、清水咲子は代表を逃しました。代表選考会は体力的にも精神的にも厳しい戦いで選手はよく頑張っていましたが、十分満足できる結果が残せなかったのは私の力不足がありました。3カ月後の五輪に向けて、新たな気持ちで挑戦していくつもりです。
(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
※週刊朝日 2021年4月30日号