元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
【写真】稲垣さんが撮った!金では決して買えぬ「圧倒的に美しい光景」
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先日山形へ講演に呼んでいただいた時のこと。会場が空港近くだったので飛行機で行くつもりが、濃霧で欠航しそうだったので急遽山形新幹線に変更。
これが、とても良かったのだ。
東京駅を出てしばらくぼーっとしていたら、米沢あたりで急に雪景色! まさにトンネルを抜けたら雪国じゃんと窓に釘付けになるうち、東北で暮らしたこともないのに懐かしさがこみあげてきた。フツーの古い家がポツポツ立つ感じ。昔ながらの店とか看板とか。東京から離れるほどに時代が巻き戻り、子供の頃の昭和の光景が蘇ってくる。
アジアなどを旅すると「昔の日本みたいだった」と感想を語る人がいるが、外国に行かずとも昔の日本は残っていた。我ながら感慨深かったのは、前はそういう場所へ行くと「遅れてる(気の毒)」と思っていたのが、「いいなー(羨ましい)」という気持ちが湧いてきたことである。
ここ8年を東京で暮らし、真綿で首を絞められるような街の変化をひしひし感じる。私の貴重な人間関係のモトである個人店はどんどん消えてゆき、スーパーやコンビニですら自動レジ化が進む。古い家も木も日々壊されオートロックの集合住宅に。何気ない無駄話をする隙間がどんどん消えていく。止まるところのない効率化は止まるところなく人のつながりを消していくのだ。