新型コロナウイルス感染症の流行が続いており、医療機関でも定期的にクラスター(集団感染)が発生しています。しかし、歯科医院でクラスターが発生したという話はほとんど聞きません。歯科の治療では患者が口を開け、唾液(だえき)の飛沫も飛ぶはずですが、なぜ? 大阪府の吉村洋文知事も同じ疑問を持ったようで、「大阪には5500もの歯科医院があるが、クラスター発生はゼロ(中略)、是非分析してもらいたい」(注)と今年1月にツイートしています。そこで、歯科医院の院長でもある、歯周病専門医の若林健史歯科医師にその理由を分析してもらいました。
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吉村洋文知事のツイートは、歯科医師仲間から聞き、私もリアルタイムで読みました。確かに全国において歯科医院でクラスターが発生したという報告はありません(編集部注:2021年4月29日に富山県で発生)。歯科医院のスタッフがコロナに感染した例はいくつかありますが、会食などのイベント、あるいは家族からの感染です。
では、なぜ歯科医院ではクラスターが発生しないのでしょうか? それは「歯科は『不要不急』なのか? 新しい生活様式に求められる歯科治療とは」(2020年6月1日掲載)でもお話ししたように、やはり、コロナ前から徹底した感染対策が講じられているからだと思います。
歯科の治療は患者さんの口の中での操作です。エアタービンで歯を削ったり、歯を抜いたりと外科的な処置が中心です。処置をする際に唾液だけでなく、血液が飛ぶことも珍しくありません。
唾液や血液を介して感染する病気はコロナ以外にもたくさんあります。しっかり対策をしないと歯科医師が病気に感染してしまう上に、治療器具などを介してほかの患者さんに病気がうつってしまいます。
これは非常に怖いことですね。そのようなことにならないよう、関連学会や厚生労働省から、きびしい感染対策を実施することが求められ、多くの歯科医院はこれを順守しているのです。わかりやすくいうと、歯科では感染対策をきちんとしなければコロナの患者さんが来たことで、あっという間に感染が広がる可能性大ですが、きちんとしていれば、リスクは限りなくゼロに近いといえます。