実はかつての歯科医院はもっとゆるい対策でやっていました。今では信じられないことですが、手袋はせず、素手で患者さんの口の中を処置していました。処置をするたびに洗浄・消毒はしていましたが、抜歯などでは手が血だらけになることもありました。

 それが1983年、エイズ(AIDS)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)が発見されたことで、大きく変わったのです。当時、エイズは原因不明で死に至る病気と話題になっていましたが、その病気の原因ウイルスの感染ルートの一つが血液と判明し、歯科医師たちも「これはまずい」となりました。

 また、同じ頃、血液を介してB型肝炎に感染する歯科医師が増えてきました。多くはむし歯の治療や抜歯時などの麻酔注射による針刺し事故で、これを機に、感染対策が一挙に強化されたのです。なお、さらにコロナの問題から昨年、ガイドラインが強化され、歯科医院はこれまで以上に感染防止対策を励行しています。

 では、具体的にどのような対策がとられているのでしょうか。

 すべてを伝えると膨大になってしまうのでポイントをお話しすると、まずは歯科医師がマスクをし、飛沫を防御していることだと思います。今は医師も当たり前のようにつけていますが、コロナ前からマスクをしているのは歯科医師くらいのものでしょう。最近はさらにマスクの上からフェイスシールドをしている人が多いですね。

 一方、患者さんには治療前に殺菌剤の入っている水でうがいをしてもらいます。これにより口の中の細菌の数を一定量、減らすことができるわけです。なお、うがいによって細菌の数が減ると口の中の環境がよくなり、抜歯後に腫れが起こりにくくなるなど、治療後の回復がスムーズになります。

 さらに、歯を削るときに飛沫や削りかすを吸引するために、口の中にバキュームという装置を置きます。さらに最近はコロナ対策として、口の外に飛んできた飛沫を吸引するための口腔外バキュームを設置している歯科医院も増えています。

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