そして始めたのが、フレディのコスプレだ。演劇経験があるミコさんにとって、他人を演じるのは初めてのことではない。しかし、フレディの影響力は別格だった。
「フレディになったつもりでコスプレをしたり、ポーズをまねて写真を撮っていると元気が出てくるんです。次はどの姿をまねしようと、考えるのも楽しくて」
思いがけない喜びも得た。自撮り写真をツイッターで公開したところ、喜んでくれる人がいたのだ。コスプレをきっかけにクイーンを愛する仲間と知り合えたこともうれしかった。
最近はコロナの心配もあり、コスプレは最小限に。今年に入り、ドラムのロジャー・テイラーのコスプレをしているちぃさんとのツーショットが楽しめたが、久しぶりの再会だった。ふだんは自宅の庭をステージに見立てたり、可能な限り周囲に迷惑をかけないように気をつけている。
「独りよがりの自己満足かもしれません。でも私にとってフレディはとても大切な存在。コスプレを通してクイーンへの愛を共有できる人たちと出会えたことは、毎日を頑張るエネルギーにもなっているんです」
クイーンの存在は、不思議と人々の創造性を刺激するようだ。映画「ボヘミアン・ラプソディ」が社会現象になっていたころは、メンバーのイラストやマンガ、編みぐるみなどの手芸が頻繁にSNSにアップされていた。
実際に曲を演奏し、ファンの前で披露しているトリビュートバンドは、今のクイーン人気をどう見ているのだろう。「クイーン・デイ」でライブを披露した「QUEER」も今年は結成10周年という記念の年だ。
「毎回、観客のなかに新しいファンの方がいるんです。映画の公開から2年以上経っても、ファンが増え続けている印象があります」とフレディ役を演じるボーカルのバルサラさんは話す。
そして、トリビュートバンドの役目は、ファンとクイーンの間をつなぐこと、とも。過去のクイーンの演奏をなぞりながら、今もオリジナルメンバーでライブを続けていたら、というイメージを加えて演奏しているという。
「QUEER」のライブもラストは本家と同様、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」から「伝説のチャンピオン」の流れは変わらない。席に座ったまま、マスクをかけて拍手だけのライブでも、リズムにあわせて体を揺らすファンの体からはクイーンへの熱い想いが立ち上っていた。(角田奈穂子=フィルモアイースト)
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※週刊朝日 2021年5月7-14日合併号