

佐々木健太郎(34)と並んで、ツインボーカルの一角を担う下岡晃(34)は、こう言う。
「原発や社会保障の問題とか、いまの社会に違和感を持っています。でも、実社会でそれを言える人がどれだけいるのか」
下岡らは、2006年まで大手レコード会社と契約していたが、契約が切れた現在は、働きながらバンドをやる。働いていると、この国の同調圧力がいかに強力かを街や職場を見ていて、思い知る。「でも」と言い、下岡はこう話す。
「音楽なら言ってもいい。違和感を表現に変えられるし、ファンと共有できる」
この春、彼らが発表したアルバム「NEWCLEAR」には「音楽だから言える」ことが詰まっている。収録の「抱きしめて」では、「危険があるから引っ越そう」という詞を反復し、「ねえ どこにあるの そんな場所が」と、置いてくる。
3.11の前に書いていた詞。初めは「地震」と歌っていたが、3.11後に「危険」に変えたらニュアンスが変わった。実社会でタブーになりかねない表現を、サラッと歌う。その直截さがファンをつかんできた。
小説家の伊坂幸太郎もファンの一人だ。小説『フィッシュストーリー』で伊坂は、無名のロックバンドが希望を捨てずに書いた歌が、未来の世界で奇跡を起こす話を書いた。どんなに青臭いと言われようとも、歌うことをやめないアナログフィッシュは、そんな物語の登場人物と重なるようだ。
「僕らの世代は社会に無関心と言われる。音楽も同じで、社会への違和感を歌わない人は多い。それを否定はしないけど、自分は嫌だなって感じる。社会の問題は、自分の人生と結びついているし、歌わずにはいられない」
「NEWCLEAR」に、「刷新」「原子力」の二重の意味をこめる。
※AERA 2013年6月10日号