この2008年の騒動は「相手も悪い」という状況だったと言えるが、2014年に起きた「差別横断幕事件」は相手云々の事象ではない。問題となったのは、2014年3月8日の鳥栖戦(埼玉スタジアム)。コンコースからスタンドへの通用口の上部に貼られた「JAPANESE ONLY」という横断幕。人種差別と解釈されるものは本来、即刻撤去されるべきだが、警備員による撤去要請も「試合中のために難しい」などの理由から結局は試合終了後まで掲げたままになった。この出来事は試合終了後、各方面からの数々の批判を浴び、リーグも問題視。浦和にはJリーグ初となる無観客試合という処分が下された。

 このような「差別行為」は、残念ながらその他のスタジアムで繰り返され、2014年8月23日の横浜FM対川崎戦(三ツ沢)では、ゴール裏の横浜FMサポーターの1人がピッチ上のブラジル人選手に向けてバナナを振りかざす行為(アフリカ系の人々を揶揄する悪質な人種差別行為)が発生。2017年4月16日のC大阪対G大阪戦(長居)では、G大阪の一部サポーターがナチス親衛隊「SS」を連想させる文字の入ったフラッグを掲出する事件も発生した。。本人たちには「人種差別」や「政治的意図」の意図はなかったのかも知れないが、「無知」であることでは決して許されるものではなく、国際社会の中では完全にアウト。当該サポーターは無期限入場禁止になった。

 さらに言語道断の許されざる行動として“黒歴史”となっているのが、2008年9月20日の柏対鹿島戦(日立柏サッカー場)で起きた鹿島サポーターによる応援フラッグでの殴打、妨害事件だ。ピッチと観客席の距離が近いサッカー専用スタジアムにて、そのスタンド最前列に陣取っていた1人の鹿島サポーターが、応援用の大旗を振り回し、CKを蹴ろうとした柏のアレックスの頭部を竿の部分で殴打。さらに逆サイドのCKの場面でも、今度は栗澤僚一の顔付近で旗の先端部分を何度も振り回す威嚇行為を行った。この人物はハーフタイムで退場させられ、ホーム、アウェーに関わらず、公式戦の無期限観戦禁止の処分が下されることになった。

 その他、その大小を問わなければ、サポーター同士の揉め事、争い事、さらには乱闘事件が毎年、全国のスタジアム各所で繰り返されている。だが、それはほんの一部であり、大部分のサポーターは節度を持ち、心の底からクラブを愛し、選手を力強く支えている。それだけに、一部の者の心ない行動で、その関係性が失われることは、単純に悲しい。コロナ禍の中で再び無観客開催を強いられることになった今、Jリーグにおいてのサポーターの在り方を、改めて見つめ直すべきだろう。

※2008年5月17日の浦和対G大阪戦で発生した暴動について、その発端に関する記載がされていなかったため、事件の経緯について誤解を招く恐れがあることから、文章の一部を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。(2021年5月11日)

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