作家の室井佑月氏は、東京五輪開催に向けて動く菅政権の無責任さを批判する。
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政府は、東京都、大阪府、京都府、兵庫県を対象に特別措置法に基づく緊急事態宣言を発出した。
4月20日、菅首相は、緊急事態宣言は東京五輪の開催判断に影響するかどうかを記者に聞かれ、
「オリンピック(への影響)はないと思っている。安全・安心な大会になるように政府として全力を挙げていきたい」
と答えた。
意味がわかる人?
政治家はよくこうした言葉のマジックを使う。なので、彼らから発せられる言葉は、注意深く受け取らなくてはいけない。
緊急事態宣言が出ると、デパートや酒類を提供する飲食店なども開くな、といわれる。その地に住む人も、スーパーで生活必需品を買う以外は、外に出るなといわれる。
東京五輪まで100日を切った今、なんで五輪だけは安全だといえるんだろうか。
あ、彼らは決して安全とはいっていない。「安全・安心となるよう全力を挙げる」といってるだけ。
そういや、アメリカ大統領のバイデンさんも、菅さんとの共同声明で、
「今夏、安全・安心なオリンピック・パラリンピック競技大会を開催するための菅首相の努力を支持する」
という風に逃げた。つまり、東京五輪開催を支持するって言葉は避けた。「やる? ふうん、まあ、がんばれや」といわれたに過ぎない。
3度目の緊急事態宣言に突っ込まざるをえないくらい、コロナの感染者が増えた。超巨大イベントである東京五輪に影響がないとはどういう理屈であろうか?
無観客で行ったとしても、外国人選手とその関係者が9万人、日本人のボランティアが約8万人、一気に東京に集まってくる。緊急事態宣言であたしたちには自粛を強いているのに?
けど、菅さんは、
「オリンピック(への影響)はないと思っている」
という。「思っている」というところがキモ。東京五輪で日本の感染者数が爆発的に増えても、海外に日本からのウイルスをばら撒(ま)いてしまったとしても、「当時、専門家と意見を交わした上でそう思った」といって終わり。しかも、専門家とのやりとりは文書も残さなくていい。