話を戻しますと、このように、注射それ自体には歯科医師は慣れています。問題は筋肉注射という点です。新型コロナウイルスのワクチンの場合、「針を垂直に刺す」という点にテクニックが必要なようですね。日本の医師もあまり経験したことがないやり方と報道されていました。しかし、講習を受ければすぐにできるようになるでしょう。そもそも注射の手技というのはそれほど難しいものではないのです。

 歯科麻酔では患者さんがアナフィラキシーを起こすこともたまにですが、あります。歯科医師は注射の副反応にもある程度、慣れており、そうした意味で、歯科医師がワクチン接種を担うことを許可した政府の決定は理にかなっていると思います。

 どれだけの歯科医師が応じるかですが、周囲に聞いてみたところ、躊躇(ちゅうちょ)している人がいる一方で、「自分で役にたてるのなら、ぜひ、やりたい」「声がかかれば行きます!」という人が意外に多くいました。歯科医師会や学会からの要請があれば、なおのこと、手を挙げる歯科医師は多いと思います(断れないからというわけではなく、歯科医師全体でやらなければならないという使命感にかられるからです)。実際に始まってみないとわかりませんが、「担い手がいなくて困る」などということは、ないのではないでしょうか。

 多くの歯科医師は日中、自分のクリニックで患者さんを診療しています。このため、手伝える日は休診日や日、祝日などに限定されるでしょう。ただ、事前に日時がわかっていればそこだけ患者さんの予約を入れない、ということもできると思います(自治体から依頼される子どもの学校歯科健診の場合もそのように調整しています)。

 報酬については、可能な範囲でお手伝いということであれば、いくらかということはあまり気にならないと思います。

 新型コロナウイルスの流行は有事といわれるほどのことですから、医療従事者としてできることは協力しなければならない、と多くの歯科医師は考えています。

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