■人間が得意なもの

 では、AIと人間の特性を理解するために、「知能」と「創造性」について確認してみましょう。

 この2つをおおまかに分類してみたのがです。

 人工知能(AI)とは、シンプルにいえば「人工的に作った知能」です。
この「知能」は、「唯一の最適な解を追求するための収束的思考(≒不確実性を下げる思考)」が得意といえます。

 解に対する不確実性を限りなく「0」に近づける「不確実性を下げる」思考を技術によって代行しているのが現在普及しているAIといえるかもしれません。

 一方、「収束的思考」とは逆のベクトルが、「拡散的思考(≒不確実性を上げる思考)」です。

 これは「創造性」に重要な思考とされています。自分の知らない世界を知りたいという興味や好奇心(内発的意欲)によって、新しい発想・アイデアを広げていく思考です。

 自分がこれまで経験したことのない現象への取り組みですので、「不確実性を上げる」思考といえるのです。

 現時点では、AIが得意なのは、不確実性を下げる「収束的思考」といえます。

 一方で人間は、収束的思考だけを行うわけではありません。不確実性を上げる「拡散的思考」も行います。

 何より人間は、「不確実性を下げる」「不確実性を上げる」という逆のベクトルの2つの思考・行動をあえて起こします。そしてその2つの異なる力のせめぎ合いから生まれる「ゆらぎ」が人間の「個性」や「創造性」の源になっていると考えられています。
 
 拡散的思考とともに、そのゆらぎから生まれる個性や創造性が人間らしさといえ、人間の得意なことといえます。

 少なくとも現時点では、この人間らしい思考の「ゆらぎ」をAIで実装することは難しいでしょう。

■人間には興味や好奇心がある

 人間には興味や好奇心があります。この興味・好奇心が不確実性を上げる思考・行動にとても重要になります。

 これがあるから、どんなに人間よりもAIのほうが得意なことが明らかになっても、人間は、興味のおもくまま、行動を起こすことができます。将棋などもそうではないでしょうか。

 今、将棋の世界では、AIのほうが強いとされています。AIのほうが得意なジャンルといえます。

 しかしそれが明らかになっても、人間は興味のまま、好奇心のおもむくまま将棋を指すことができます。

 たとえそれが、意味のあることかどうか、答えが見つかるのかどうか不確実であっても、人間は思考し、行動するのです。

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