オックスフォード大、ケンブリッジ大等をへて、現在、東大ニューロインテリジェンス国際研究機構で研究する脳神経科学者の大黒達也氏。最新刊『AI時代に自分の才能を伸ばすということ』(朝日新聞出版・刊)から特別に抜粋し「フィンランドの創造性教育に関して思うこと」や「学ぶさいに大事なこと」などついてお届けします。
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脳神経科学、心理学、人工知能(AI)を用いて音楽的な芸術性について研究しています大黒達也と申します。特に、「人間の個性や創造性、才能、芸術などが、どこから生まれて、そしてどのようにして発達・成長していくのか」ということに興味をもち、研究しています。
■フィンランドの教育に学ぶべきこと
人間を生かし、創造性を高めるのに、私がヒントになると思っていることをお話ししましょう。
それは、近年、世界各国で導入され始めている「創造性教育」です 。
この「創造性教育」とは、学校の教科書にある知識をただ単に詰め込むのではなく、知識と知識を結びつけて新たな知見を生み出すような発想力や創造力を重視する教育といえます。
例えば「問題解決の選択肢を多く与える」や「問題そのものを与えずに子どもたち自身が問題を見つけるような課題を与える」などが子どもの創造性を高めるとされています 。
フィンランドは、この「創造性教育」の先進国であり、一般学力が高いことは有名です。
世界的な学習到達度調査「PISA(ProgrammeforInternationalStudentAssessment)」においても、フィンランドは常に成績上位に位置しており、読解力において2000年と2003年では世界1位を果たしています。
いったい日本の教育とフィンランドの教育では、何が違うのでしょうか。
数年前、私がオックスフォード大学で研究員として働いていたときのボスもフィンランド人でした。当時は、よくあちら側の家族と夕食に行ったり、週末に公園で家族ぐるみで遊んだりしたものです。
その当時、ボスの子どもに対する接し方を中心として、フィンランドの親の子どもに対する接し方を見る機会は多くありました。
それは、日本の一般的なものとはまるで違っていたのです。
いたずらや落書きは自由にさせており、その様子は、そばで見ている大人の私のほうがハラハラしていたほどでした。
子どもの好奇心や興味・関心をとても大事にしているのです。
日本であれば、きつく注意されたり、怒られたりするのではないでしょうか。