15年に現在日本水連副会長の上野広治さんが競泳委員長を退かれたとき、「後任を育成してほしい」と言われました。新しいコーチに国際大会のヘッドコーチを任せたり、分科会をつくって強化策をつくってもらったり、可能性のあるコーチの熱意を吸い上げる努力を続けてきたつもりです。
強化が実を結ぶまでには時間が必要です。種はまかれています。男子自由形の強化などで徐々に成果が出ています。コロナ禍でも全国のコーチが工夫をこらしてジュニア強化にあたり、日本の競泳がいい方向に進んでいる実感もあります。
役職を交代するタイミングを見極めることは組織を活性化するうえでとても重要です。日本競泳が一丸となっている今、競泳委員長を降りることを決めました。正式決定は6月になりますが、18年パンパシフィック選手権の競泳日本代表ヘッドコーチなどを務めた梅原孝之さんに交代する予定です。すでに新体制の準備も動き始めています。
一番の理由は後任が育ったこと。もう一つ、後任の方が引き受けるのにいいタイミングだと考えました。自分自身のことでいうと、余力のあるうちに交代して新しい役目を担うほうが組織的にも個人的にもいいのではと思っています。
まずは2カ月後に迫った東京五輪です。新体制で挑む競泳日本のヘッドコーチとして全力を傾けます。
(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
※週刊朝日 2021年5月28日号