原宿リハビリテーション病院(東京)の名誉院長、林泰史さん(81)は今も週3日出勤し、朝7時半から午後5時まで、患者へのリハビリテーションや会議に忙しい。『80歳現役医師が教える! つまずかないカラダの動かし方』(日東書院本社)という著書もある。「階段は薬」と思い、勤務中は4階や5階までエレベーターを使わず階段で行き来し、仕事のない日はもっぱら歩く。

 50分ほどのウォーキングで、自宅の近所の傾斜地を上がったり下がったりするのがいつもの締めだ。

 20代半ばで医者になり、7年後に高齢者専門の整形外科医となった。数多くの高齢者を診てきた経験から「80歳を過ぎたら、とにかく骨を鍛えること」と力説する。

 林さんによると、高齢者が介護を必要とするようになる原因は、50、60代のうちは脳血管疾患(脳卒中)が多い。年代が上がるにつれて「脳卒中」の割合は減っていき、80歳を超えると「骨折・転倒」が脳卒中に近づき、90代でその割合は逆転する。

 何より転ばないことが大事。そして、日ごろからカルシウムを積極的にとることだ。

 しらすやきくらげなどに多く含まれるビタミンDはカルシウムの吸収を助け、納豆はカルシウムを骨に沈着させるビタミンKが多い。これらを意識的にとると良いという。家の段差を減らすといった住環境の整備も必須だ。

「老化には『病的老化』と『通常老化』があります。後者は年齢の割に若々しく生きがいを持って生きている人のことで、『サクセスフルエイジング』と言えるでしょう。また現役の『役』は使命や役割のこと。いくら骨や筋肉を鍛えても、生きがいがなければだめです。高齢者の皆さん、何を自分の『役』とするか。それを探すところから始めて、豊かな人生を送りましょう」(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2021年5月28日号より抜粋

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