70代でも働くことが珍しくなくなった今、定年後もいきいきと過ごす高齢者がいる。彼らにその秘訣を聞いた。
【前編/東海林のり子 70代より元気になった理由は「思い込み力」?】より続く
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昨年秋に後期高齢者の仲間入りをした都内在住の永井秀之さん(75)は「85歳までは働くからよろしく」と周囲に触れ回っている。
広告会社「アサツーディ・ケイ」の元役員。退職したのは11年前になる。その後は6、7社でアドバイザーとして働いた。現在はネット系企業「イー・エージェンシー」の会長として東京都内のオフィスに通勤するかたわら、別の健康系の企業で特別顧問も務めている。
「後期高齢者とはよく言ったもので、実際になってみると、75でも80でも90でもみんな同じ。違いはない」ときっぱり。
ただ違いがあるとすれば、「働くか、働かないか。楽しいか、楽しくないか。ちゃんと食べているか、食べていないか。病院通いや薬が日課か、日課じゃないか。シニアの人生、生き方はすべて二択です」。
75歳になって、自分が喜ぶことを再発見した。永井さんの場合は好きな音楽を楽しむこと、そして家にこもらず外食を楽しむことだ。
カラオケ店にひとり繰り出し、大声を出す。心肺運動の強化になるし、ひとりなら少々下手でも「誰も被害者がいないので気分も楽です」と笑い飛ばす。テレサ・テンに美空ひばり、千昌夫、川中美幸、山口百恵、玉置浩二……。歌うのはもっぱら演歌やジャパニーズポップス。「元気が出るし、その時代を思い出して涙や愛や悲しみ、みたいなものが全部ガバッて出てきます」と永井さん。
足を使っておいしい店を発見するのも楽しみ。大好きな店を決めて定期的に顔を出せば、女将さんが安くしてくれることもある。好きな料理なら胃腸にも優しいのだという。大の甘党で、話題の店には遠くても足を運ぶ。特に、つぶあんの和菓子には子どものころから目がない。
75歳になる前、運転免許を返上した。電車やバスを利用して、小旅行気分で都内歩きを楽しんでいる。公共交通機関が充実している東京ならではで、通勤定期を持つメリットも生かしている。その意味でも「金額の多寡は別にして、人に頼られて、毎日働いていることは重要です」と説く。