だが冒頭で触れたように、すでに接種したのかどうかは、「個人情報」にあたるとして宮内庁は、公表しないと繰り返している。

 皇室の公務は、オンラインが中心となり感染症対策も取られてはいる。しかし、公務でかかわる相手や、側近や身の回りのお世話をする女官や侍従、職員を含めると、外部との接触を100%遮断して生活するわけにはいかない。

 緊急事態宣言前の4月には、両陛下も千代田区の憲法記念館に足を運び、「みどりの式典」に出席しているし、秋篠宮家眞子さまも勤務先に出勤している。

 重症化リスクの高い皇族方もおり、接種の状況が国民にとって関心の高い事柄であるのは間違いない。

 かたくなに公表を拒む宮内庁の態度に首をかしげるのは、元宮内庁職員の山下晋司氏も同じだ。 

「これまで、天皇や皇族方の健康に関することは、個人情報であっても、国民の大きな関心事の場合は公表してきたはずです。今回、公表しない理由が個人情報というだけでは苦しいのではないでしょうか」

 平成の天皇陛下が前立腺がんや心臓のバイパス手術をした際は、皇室医務主幹らが記者会見を開き詳細に経過を公表した。感染症が猛威をふるったときも同じだ。2009年には、天皇陛下や皇族方が新型の豚インフルエンザワクチンの接種を受けたこと、2013年には、皇太子であったいまの天皇陛下がインフルエンザを発症した際にも、投薬や予防接種の状況を公表している。

 立憲民主党の大西健介議員は、4月の衆院内閣委員会で皇室へのワクチン接種の状況について質問している。質問を出した理由について、こう話す。

「公開せずに隠すほうが、よほどあれこれと憶測を呼んでしまう。明らかにするほうが、よほどいい。菅義偉総理も訪米を控えて感染症対策を万全にするために、2回接種したことを公表しています。日本国の象徴と定められた天皇陛下が、接種したことで批判が沸き起こるとは考え難い」

 海外の王室も明らかにすることで、混乱をさけている。英王室は、これまで王室メンバーの医療問題を公表してこなかった。しかし、エリザベス女王やチャールズ皇太子などは、「世間の憶測を打ち消すため」に、接種したことを明らかにしている。

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隠すことで信頼が失墜した海外王室のケース