米軍の巡航ミサイル「トマホーク」(ロイター/アフロ)
米軍の巡航ミサイル「トマホーク」(ロイター/アフロ)

 改定の焦点となったのが、敵の射程圏外から攻撃できるスタンド・オフ防衛能力などを活用した敵基地攻撃能力だ。反撃能力の行使には長射程ミサイルを想定しており、その目玉が艦船などから発射される米国製巡航ミサイル「トマホーク」だ。防衛省は23年度予算案でトマホークの取得に2113億円を計上。取得数は明らかにしていないが、一部報道では27年度までに最大500発購入するとの見方もある。

 だが、トマホークは無用の長物になる可能性が高い。防衛ジャーナリストの半田滋氏が指摘する。

「トマホークの爆買いこそ最大の無駄遣いです。射程が1600キロ以上といっても、亜音速で飛行速度は時速900キロ程度。中国のような軍事技術が進んだ国から見れば脅威にならない。撃ち落としたり、攻撃目標を外させたりということが簡単にできてしまう。そんな兵器を敵基地攻撃に使うというのです。弾道ミサイルはマッハ20(音速の20倍)を超えるものもあるし、中国はすでに極超音速ミサイル『東風17』を実戦配備しています」

 国産の12式地対艦誘導弾能力向上型は射程を1千キロ超に延ばし、超音速の島嶼防衛用高速滑空弾とともに26年度の実戦配備を目指す。極超音速誘導弾も現在、研究開発が進められている。トマホークはそれまでの「つなぎ」としての位置づけだという。だが、国産の長射程ミサイルなどの開発が目算どおりにいくとは限らない。12式の従来の射程は200キロで、1千キロに延ばすには搭載燃料を5倍にしなければならず容易なことではないからだ。半田氏が続ける。

「今回は射程を延ばすだけではなく、高速で飛ぶようにしなければならないし、高速滑空弾も射程延長型(2千~3千キロ)の開発に入ります。トマホークが米国から入ってくるのは3~4年後でしょうから、実際には国産兵器の運用まで10年くらい見積もっているのではないかと思われます」

 トマホークはもともと核搭載が可能だ。1980年代にNATO諸国に地上発射型のトマホークや、準中距離弾道ミサイルの「パーシングII」が持ち込まれた。70年代からソ連がヨーロッパ全域を射程に収める中距離弾道ミサイル「SS20」を配備したことに対抗するためだった。際限のない軍拡を避けるために、87年に米ソ間でINF全廃条約を締結。地上発射型の中距離弾道ミサイル・巡航ミサイル(核弾頭・通常弾頭を問わず)は撤去・廃棄された。前田氏が説明する。

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