■米国の言い値で兵器を大量購入
「INF全廃条約はトランプ政権のときに米国が離脱したことで、ロシアも脱退しました。いまは無条約になっていますが、ロシアのウクライナ侵攻という新しい事態がありながら、中距離ミサイルは米国から欧州に1基も持ち込まれていない。にもかかわらず日本がトマホークを大量に導入するとは時代錯誤も甚だしい」
一方、中国は中距離ミサイル2千基を保有するといわれ、日本全域とグアムを射程に収める。
「米国は地上発射型の中距離ミサイルを日本に配置することを求めています。南西諸島を中心に配備すれば中国に対する強いメッセージになります。米国は核弾頭を付けることを狙っていることも予測しておいたほうがいいでしょう」(前田氏)
トマホークやステルス戦闘機F35などは、米国政府を窓口として取引するFMS(有償軍事援助)の枠組みで購入する。第2次安倍政権以降、米国製高額兵器の爆買いによって契約額が膨張し続け、23年度当初予算案では過去最高の1兆4768億円に上った。それまでの過去最高額は19年度の7013億円だから、一気に倍増だ。価格が米国の「言い値」で、自国軍向けよりずっと高く売りつけることでボロ儲けする制度になっている。
半田氏が語る。
「兵器ローン残高が莫大になって防衛費を圧迫しているうえ、さらに買い増しするためにGDP比2%が必要ということなのです。バイデン氏が上機嫌になるわけです」
FMSを巡る迷走ぶりを如実に示すのが「イージス・システム搭載艦」だ。23年度予算案にはその整備費として2208億円が計上されている。イージス・システム搭載艦の元の姿は、配備を断念した地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」。契約を解除すれば購入費約1800億円が米国に違約金として取られる恐れがあった。そこで代替手段として、洋上に転用して新造することにしたのだ。
半田氏が解説する。