TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。宇宙飛行士のマイケル・コリンズさんについて。
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今年のゴールデンウィーク初日、生きていたら70歳(古希!)になる忌野清志郎の追悼特番再放送の打ち合わせをしていたら、「史上最も孤独な男」の訃報を知った。
「アメリカの宇宙飛行士マイケル・コリンズさん死去。90歳。1969年、アポロ11号が人類初の月面着陸を果たした時、ニール・アームストロングとバズ・オルドリンの両飛行士は月に降り立ったが、コリンズさんは司令船コロンビアで月を周回しながら待機。一人で任務をこなし、『史上最も孤独な男』『忘れられた宇宙飛行士』と呼ばれた」
小学生だった僕は朝日新聞をスクラップしたり、着陸船のプラモデルを組み立て校庭の砂場を月面に見立てて置いたりした。着陸を中継するテレビ画面は全世界で4億から5億人が観たといわれる。
「一人の人間には小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という言葉が有名になったが、それより月からの声が「荒涼とした美しさ」「壮大なる荒涼」と連呼していたのが印象に残った。圧倒的な静寂と闇。そんな月面に生命体はいるのだろうか。
その夜、Netflixで英国女王エリザベスII世の半生を描く『ザ・クラウン』を観ると、偶然にも、イギリスロイヤルファミリーも月面着陸に興奮し、リビングに集まってテレビ中継に見入る回だった。
女王の夫、エディンバラ公フィリップ殿下(トバイアス・メンジーズ)は、地球帰還後、表敬訪問した宇宙飛行士たちに会う(彼らは西側諸国を凱旋、日本では文化勲章を受章している)。
自らも海軍パイロットだったフィリップはバッキンガム宮殿の一室を用意してインタビューを試みる。しかし……「ヒーローではなく普通の若者たちだった。独創性も自発性もないじゃないか。最高の宇宙飛行士だと思ったのに」