「ビール」は札幌市、「ワイン」は東京都区部、「ウイスキー」なら青森市が首位に立った。飲料メーカーの事業所などの有無も関係していそうだ。
一方の“外飲み”。外食代のうちの飲酒代をみると、高知市が断トツで1位。全国平均の倍近い額を使っている。お酒の強さを競い合うお座敷遊びが根づいていることも、うなずける結果だ。
喫茶店文化が色濃く残るのは東海エリア。「喫茶代」の上位はやはり、岐阜市、東京都区部、名古屋市の順。これらは年間支出額で1万円を超えている。
「肉類」も地域の特徴を浮かび上がらせる。
「牛肉」は大津市、京都市、奈良市など関西勢が上位を占めたものの、「豚肉」は横浜市、新潟市、さいたま市など主に関東圏が目立った。
例えば、豚肉を使ったまんじゅうを関西圏は「ブタまん」、関東圏は「肉まん」と呼ぶ。関東では肉といえば豚肉を思い浮かべることが多いためだろう。
ちなみに「鶏肉」の購入額は熊本市、「合いびき肉」は鳥取市が1位だった。
「魚介類」のなかの「カキ」は広島市、「タラコ」は福岡市、「梅干し」は和歌山市、「カステラ」は長崎市がそれぞれ購入額トップで予想を裏切らない結果だった。
ところが、「納豆」は水戸市ではなく福島市、「みかん」は静岡市や和歌山市ではなく富山市が1位となるなど、世間で知られる一般的なイメージとは異なった。
「全国的に知名度が低くても、地元では当たり前のものや有名なものをうまく使えば町おこしにつなげることができます。店舗や事業の進出にあたっては、ランキングの下位県に注目するのも一つの手。青森や宮崎、秋田など、外食の喫茶代が少ないところは、コーヒーチェーン店などの進出余地が大きいとみることもできます」
宅森さんは、家計調査に表れる地域性を詳しくみると、ビジネスにも役立つと指摘する。
コロナ禍にあって、業績の落ち込んだ企業が多く、商売もなかなか思うようにいきにくい。意外な県民性に注目して、“反転攻勢”の手がかりにしてほしい。(本誌・池田正史)
※週刊朝日 2021年6月4日号より抜粋