神奈川県大和市には、市役所に「終活コンシェルジュ」が常駐。葬儀や納骨、遺品整理などの相談に乗り、葬儀会社や遺言書を作成する専門家の紹介などを行っている。東京都足立区では、「老い支度読本」や「エンディングノート」を住民向けに配布。区が持っている高齢者の個人情報を町会や自治会に提供し、地域で見守り活動ができるような条例を制定した。ほかにも千葉市、兵庫県高砂市など、終活サポート事業は全国に広がりつつある。

 1993年設立のNPO法人りすシステム(本部・東京都)は、生前契約の老舗的存在である。葬儀・埋葬、住居の片づけ、保険・年金などの手続き、個人情報の消去などの「死後事務」と、身元引受保証、認知症になった場合の後見、介護保険契約の代理などの「生前事務」を行っている。

 01年に設立されたNPO法人きずなの会(本部・愛知県)は、高齢者、障がい者の身元保証、生活支援、金銭管理、葬儀・納骨の支援、死後事務などを行っている。これまでに延べ1万2600人が利用し、存命の会員は約4700人という。

■最も信頼のおける人に死後事務を託す

 終活サービスに参入する企業も多い。たとえば自宅にカメラやセンサーを設置し、高齢者の暮らしぶりを確認する「見守りサービス」を導入する警備会社や電力・ガス会社、家電メーカーなども増えてきた。賃貸物件のオーナーや入居者本人向けに、孤独死が起きた際に部屋の原状回復や遺品などを整理する商品を販売する損害保険会社もある。

 三井住友信託銀行が始めた「おひとりさま信託」は、死後事務などの手続きをワンストップで対応する信託商品だ。エンディングノートの保管、SNSでの安否確認、死後事務の資金管理を三井住友信託銀行が行うほか、葬儀、訃報の連絡、家財道具の整理、ペットの託し先への搬送、デジタル遺品の情報消去といった死後事務は、生前に死後事務委任契約を結ぶ一般社団法人安心サポートが実現してくれる。

 最初に300万円以上の資金を預ける「金銭信託タイプ」と、終身保険の仕組みを使って死亡保険金を活用する「生命保険タイプ」がある。後者は、加入する生命保険の死亡保険金を費用に充てるので、少ない元手で始められる。もちろん両タイプとも、後に内容の見直しが可能だ。

「おひとりさま」の場合は、終活を相談できる相手を見つけることがカギとなる。相談先は友人、知人、弁護士、行政書士、司法書士、そして銀行・信託銀行などだが、何よりも信頼性を第一に検討するようにしよう。

※1:平成30年住宅・土地統計調査結果「空き家数及び空き家率の推移ー全国」(総務省統計局)
※2:平成26年空家実態調査(国土交通省住宅局)

【監修】
田中弘美(ファイナンシャルプランナー)

(文/駒井允佐人)
※『定年後からのお金と暮らし2021』より

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