写真はイメージ/GettyImages
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 高齢者の単身世帯の割合が増えている。そんな背景から、行政、NPO、保険会社などが「おひとりさま」の身じまいをサポートし始めていることをご存じだろうか。死後の事務手続き代行の現状について、現在発売中の『定年後からのお金と暮らし2021』(朝日新聞出版)から紹介する。

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 2018年現在、65歳以上の高齢者のいる世帯は2492万7千世帯で、全世帯の48.9%、そのうち27.4%(683万世帯)が一人暮らしである。一方、東京都監察医務院が東京23区内で取り扱った「自宅住居で亡くなった単身世帯の者(65歳以上)」は、19年で男性が2534人、女性は1379人。単身世帯の増加にともなって、このようないわゆる「孤独死」が増える傾向にある。

「おひとりさま」とは、未婚の人、配偶者と離婚、死別した人、身寄りがあっても頼りたくない、頼れないという人も含まれる。その背景には、少子高齢化、未婚率・離婚率の上昇、女性の社会進出などがある。つまり誰でも「おひとりさま」になる可能性があるということだ。

「おひとりさま」が亡くなった場合、遺体の引き取りから葬儀、墓、相続、遺品の問題、その他の手続きはどうするのか。持ち家が空き家となり、社会問題化することもある。現在、空き家は全国の住戸の13.6%を占めるが(※1)、その発生原因の第1位は単身世帯者の死亡(35・2%)である(※2)。

 こうした背景もあり、早いうちから終活を始める「おひとりさま」が増えている。「自分じまい」の憂いをなくし、残りの人生をいきいき過ごしたいというわけだ。近年では、そんな「おひとりさま」の終活をサポートする自治体や企業、NPOが増えている。

■「おひとりさま」向け行政や企業の終活支援

 神奈川県横須賀市は15年7月から、一人暮らしで身寄りがなく、生活にゆとりがない高齢者を対象とした「エンディングプラン・サポート事業」を始めた。死亡届出人の確保や、リビングウィルなどの相談、葬儀社との契約、支援プランの策定、葬儀の実行などを行っている。

 さらに18年5月には、本人情報や遺言の保管場所、墓の所在地、諸々の終活情報を事前に登録し、万が一のときには本人が指定した人物や医療機関の照会に市が応じる「終活情報登録伝達事業(わたしの終活登録)」を始めた。身元がわかっていながら遺骨の引き取り手がない、墓の場所がわからず無縁仏として納骨される、といった状況の改善に役立っているという。

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孤独死の損害保険まで誕生