秋篠宮家の眞子さまと小室さんの結婚問題で信頼が揺らぐ皇室。世界を見渡せば、国民からの敬愛を失いつつある王室がある。その一つがほほえみの国タイ。タイ王室は、日本の皇室とも縁が深い。前国王は国民から崇敬されてはいたが、いまも不敬罪があるこの国では王室の批判は長年タブーだった。それが現在、瓦解(がかい)寸前なのだ。国民に寄り添うことを忘れた代償とは――。
【写真】秋篠宮家はタイで人気の王女を表敬訪問。眞子さまの姿も
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「親しい2組の親戚」
皇室で長く仕えた侍従長は、かつてのタイ王室と日本の皇室の関係を、そう表現したことがある。
昭和から平成にかけて、上皇ご夫妻や秋篠宮ご一家の絶え間ない努力のもとに、タイ王室とは深い信頼関係を実現させていた。
2016年秋に、国民から絶大な敬愛をうけていたプミポン国王が88歳で逝去した。翌17年、タイの首都バンコクのアンバラ・ビラ王宮を、明仁天皇(現上皇)と美智子皇后(現上皇后)が訪れた。プミポン前国王の祭壇を前に両陛下が深く礼をした。
僧侶の読経が始まると、半世紀を超えて交流を育んだプミポン前国王と会話をするかのように、両陛下は静かに祭壇を見つめた。
おふたりが初めてタイの地を踏んだのは、東宮時代の1964年。昭和天皇の名代として訪れたときだ。国王とシリキット王妃は、若き東宮夫妻をチェンマイにある離宮に招待。現地へ向かう機内で愛用のクラリネットを取り出した国王に、おふたりはベニー・グッドマンの「メモリーズ・オブ・ユー」をリクエストしたという。
国王は車のハンドルを自ら握り、山道を走った。車を降りた後は山道を歩いた。国王が案内したのは、モン族の集落であった。かつて明仁天皇は記者会見で、
「三晩の思い出深い滞在をしました」
と懐かしんでいる。
17年秋に行われたプミポン国王の葬儀には、親交の深い秋篠宮ご夫妻も参列している。
皇室と深い交流を積み上げてきた国王が亡くなり、2016年に即位したのがワチラロンコン国王(68)だ。
新国王は、皇太子時代に日本に来たことがある。1989年の昭和天皇の大喪の礼、翌90年の即位の礼には皇太子だったワチラロンコン国王が出席した。また、明仁天皇と美智子皇后がプミポン前国王の弔問のために宮殿を訪れた際には、通訳などを入れずに3人で会話をしたという。