今回はコロナ禍の影響で海外遠征が難しいため、国内の試合に出てレースで力を出し切る泳ぎを身につける必要があります。一つひとつのレースで見つかる課題は必ずあるはずです。
五輪代表に限らず、中高生の選手は6月から7月にかけて全国大会に向けた地域の大会があります。自分が目指す最高レベルの大会を常に想定して、出場する大会の予選、決勝の意義を考えて、レースに挑むことが大切だと思います。
5月にハンガリーのブダペストであった欧州選手権では、予選からレベルの高いレースが続きました。決勝は各国2人の枠があるため、同じ国の選手同士の競争もあります。近年は欧州全体のレベルが上がり、予選すなわち午前のレースから頑張らなければ勝ち上がれない状況も生まれています。午前中に決勝がある東京五輪を想定して、朝から力を出すレースを実践しているように見えます。
国内では6月3~6日、千葉県国際総合水泳場でジャパンオープンが開かれます。五輪代表選手はそれぞれ目的意識を持って臨んでほしい。コロナ禍でいつもの五輪イヤーとは違う6月ですが、貴重な経験と前向きにとらえていきたい。
(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数
※週刊朝日 2021年6月11日号