近年、同じく予防的に働くデュタステリド製剤(製品名:ザガーロ)も登場したが、注意点もあるという。
「フィナステリドより効くと話題ですが、主に性欲後退や勃起不全の副作用があります。見た目をとるか男性機能をとるか、ジレンマになるかもしれません」(佐藤医師)
こうした投薬治療を後押しするものとして、低出力レーザー照射や成長因子注入の治療法を勧める病院もあるが、“営業トーク”を鵜呑みにしないよう、注意が必要だという。
「脱毛症の治療法や治療薬はさまざまなものが開発されていて、長期にわたる治療に月何万円も支払う人もいますが、基本の投薬治療だけで十分効果はある。中には科学的根拠の薄いものもあるので、注意が必要です」(同)
投薬で効果が得られない場合の選択肢として有力なのが、自毛植毛だ。
髪が残っている部分から皮膚を切り取り、毛包を一つひとつ切り離して薄毛部分に移植する。自家移植なので拒否反応もない。そのとき生えていた毛はやがて抜けるが、半年もすれば次の毛が生えてきて、1年ほどでしっかり成長するという。料金は1200株(約1800本)ほどで100万円弱程度(東京メモリアルクリニックの場合)。
「婚活中だった39歳の男性は、効果を急ぐために投薬と植毛を同時進行。望み通り、40歳で結婚しました。60代の会社社長はかつらを使っていましたが、女性との夜の営みのときに頭をかきむしられるので困ると、植毛を。どこにニーズがあるか、わからないものです」(同)
ちなみに他の病気と同じく、薄毛も早期発見・早期治療が効果的。自毛植毛も、そもそも植える毛が残っていなければ行えず、産毛すらないところには植毛できないので要注意だ。
もう手遅れか、と諦めるのはまだ早い。新たな治療法のための基礎研究は、今も続けられている。理化学研究所等は、男性の頭皮から採った髪の毛の元になる細胞を培養し、大量に毛髪を増やす技術を開発。臨床研究開発等への支援寄付金を24年まで集めている(具体的な実用化については時期未定)。また、同研究所は美容院向けヘアケア製品を手掛けるアジュバンコスメジャパンと共に、化粧品に含まれる特定の成分(機能性ペプチド=アミノ酸の重合体)が育毛に効果的であることを発見。同社の頭皮用美容液・KASUIエッセンス(80ミリリットル5720円)に配合して、美容院などで販売している。(浅野裕見子)
※週刊朝日 2021年6月18日号