内村光良(撮影/写真部・掛祥葉子)
内村光良(撮影/写真部・掛祥葉子)
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 番組制作者は、「内村がスタジオで笑うかどうかが番組作りの指標になる」と口をそろえる。その真意とはなんなのか?

【写真】「理想の上司ランキング」女性部門の1位はこの人

 理想の上司ランキング、男性部門で5年連続1位のウッチャンこと内村光良の“上司力”に迫った書籍『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)。関係者への取材を重ねた著者の畑中翔太が、リーダー内村を分析する本連載。

 第11回目のテーマは「お客さま視点」。

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 2020年の年末で、4年連続でNHK紅白歌合戦」の総合司会という大役を務めた内村。思い出されるのは、とある年の紅白の舞台上で、内村も敬愛する往年のレジェンド歌手たちが立て続けにステージでパフォーマンスをし、クライマックスへと向かっていったとき、内村が突然、「なんか俺、すごい幸せで楽しい!」と生放送中に叫んだことだ。
 
 それをたまたまテレビの前でリアルタイムに見ていた筆者は、「そうか、今見ているこの状況は幸せで楽しいんだ」と視聴者として共感を覚えた。紅白の舞台で総合司会を務めながらも、内村自身が国民のひとりとして「紅白を楽しむ視聴者」である自分を見失っていないことが伝わった瞬間だった。
 
 バラエティーの制作現場でも、多くのプロデューサーやディレクターからは、「(収録時に)内村さんが笑うかどうかを気に掛ける」という声を聞く。
 
 それは、内村が他人のパフォーマンスに対して素直だからというだけではない。番組作りの最前線に立つMCでありながら、同時に内村が、一番信頼できる、一番厳しい、一番目が肥えた「視聴者=お客さま」だからだ。
 
 テレビ東京の伊藤隆行プロデューサーは、

「番組づくりのときに、司会の人におもねるとか忖度(そんたく)しすぎて軸を見失ってしまう番組がたまにあるが、内村さんがどこでどう笑うかを気に掛ける行為をそれと同じだと受け取られたくない。内村さんの場合はそうはならない」

 と強調したうえで、

「内村さんは本当に視聴者みたいに正直なので、だから、内村さんの反応を気にするんですよね。VTRを見るときは普通の顔をして見ているし、無理に笑うということは一切しない。でも笑うときは本当に表情に出る。実は厳しくもあるので、笑わないときは絶対に笑わないということをわかっているから」

 と、同業者への身びいきなどしない“お客さま目線”のシビアさに全幅の信頼を明かす。

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笑いを内村という“フィルター”にかける