デビューから35年以上、大ベテランの域に入った内村光良だが、聞くところによると、「ウッチャンとズブズブ」なテレビ局員・制作会社関係者はいないらしい。
理想の上司ランキング、男性部門で5年連続1位のウッチャンこと内村光良の“上司力”に迫った書籍『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)。関係者への取材を重ねた著者の畑中翔太が、リーダー内村を分析する本連載。
第12回目のテーマは「マインドディスタンス」。
* * *
関わる多くの演者やスタッフから尊敬と愛着の念を持たれている内村。しかしその一方 で、 20 人を超える取材の中で、「私は内村さんの心をすべてつかんでいます」という関係者 は不思議と一人もいなかった。
業界的な言い方でいえば、「内村さんとズブズブです」というテレビ局・制作会社のプロデューサーやディレクターが見当たらなかった。
これは推測になるが、内村は本人の意識の有無にかかわらず、他人との距離を「ある程度、保っている」のではないだろうか。
内村はもともと、人見知りな人間だ。若い頃から内村をよく知る関係者がしきりに語ってくれたことだが、内村は20代から今も変わらず、収録終わりに芸人同士でわいわいと飲みに行くということもあまりしないタイプだ。
内村に非常に近いと思われる後輩芸人のふたりは、
「海のように深くて、魅力が深すぎてわからなくなる。もっと知りたくなる。不思議な方」(ウド鈴木氏)
「間違いなく温かいのに、でもべたべたする感じじゃない。不思議な距離感」(いとうあさこ氏)
と口をそろえる。
そんな内村にとって、 「他人と一定の距離感を保つ」ということは実は自然なことかもしれないが、このスタンスがコーチングにおいて、絶妙に効いてくる。
筆者が思うに、チームを動かすリーダーになるためには、部下や後輩を「受け入れる」ことはしても、本当の「懐」に入らせてはいけないのではないか。