6月20日で沖縄を除く9都道府県で緊急事態宣言が解除されたが、飲食店での酒類の提供は夜7時までと、まだ日常は戻りそうにない。そんな中、頼みの綱のワクチンの接種の順番をめぐり「格差」が生じている。なし崩し的に東京五輪の開催が迫る中、数々の問題点が浮かび上がってきた。
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コロナ禍脱出の「切り札」とされるワクチン。だが、そのワクチンをめぐり、国民の間に分断が生み出されかねない事態となっている。
原因の一つは、開催まで1カ月となった東京五輪。6月18日、東京大会で実施される競技の審判や選手村のスタッフ、選手を取材する報道関係者などを対象にワクチンの優先接種が始まった。
五輪関係者の優先接種に不満を感じる人は多い。千葉県内で居酒屋を経営する店主はこう話す。
「緊急事態宣言を解除しても、お酒の提供が夜7時までなら店としては何の意味もないですよ。国は、コロナの感染拡大の原因として飲食店をずっと悪者にしてきたのに、ワクチン接種は五輪関係者を優先する。なんかおかしくないですか」
もう一つは、「大企業優先」と受け取られかねない動きだ。接種スピードを上げるために、21日からは企業や大学、団体単位で実施する「職域接種」が本格化する。政府発表では、すでに全国で3123カ所、約1280万人分の申し込みがあったという(17日時点)。
ただ、職域接種の申し込みは、1会場で最低千人(計2千回)の接種ができることが条件。ワクチンは無料で提供されるが、医師や看護師は自力で確保する必要があり、対応できるのは大企業など大きな組織に限られる。7月からは国会議員を対象にした職域接種も始まる見通しだ。
格差や貧困の問題に詳しい作家の雨宮処凛氏はこう語る。
「結局は、フリーランスやコロナの影響で仕事を失った人、中小企業の従業員や自営業者の接種が後回しになってしまう。政府は、大企業でも非正規雇用やアルバイトなどの雇用形態によってワクチン接種を区別してはいけないという方針を示していますが、罰則規定がないので実効性があるかわかりません」