「腎臓の機能の低下には血圧が大きく影響します。腎臓の治療=血圧を下げることと言っても過言ではありません。腎臓力を高めたいのなら、とにかく血圧を気にしてください」(牧田医師)

 北京大学が16年に発表した論文によると、上(収縮期)の血圧が120~139、下(拡張期)の血圧が80~89の「高値血圧」レベルでも、慢性腎臓病の発症リスクが1.28倍高くなるという。腎臓にとって血圧を正常に保つことがいかに重要であるかがわかる。

「まずは自分がどれくらい塩分を摂取しているかを知ることが大切です。食事のたびに気にしてみてください。尿検査で推定値を調べることもできます」

■1週間で薄味嗜好に

 腎臓の解毒力を高める方法として牧田医師が勧めるのが、水をたくさん飲むこと。人間は尿や汗として1日に約2.5リットルの水分を排出しており、それに応じた水分を摂取しないと腎臓を悪くしてしまうという。日本腎臓学会が推奨するのは「1日3リットル以上」だ。

「体内の水分が少ないと、尿の出も悪くなり毒素が体にたまる。毒素がたまれば、腎臓の負担が大きくなるので、水分摂取は大切です。特に気温が上昇するこれからの季節は注意してください」

 夏季の血圧について、高血圧を中心とした循環器病の専門家、日本歯科大学病院内科臨床教授の渡辺尚彦医師はこう指摘する。渡辺医師は1987年8月から入浴中を除くほぼ24時間、血圧を測定し続けていることから、「ミスター血圧」とも呼ばれる。

「夏は血管が拡張するので、寒さで血管が収縮する冬と比べ血圧は下がりやすい。しかし、高血圧が引き金となる脳梗塞は夏にも多いことがわかっています」

 原因は、脱水による水分不足だ。汗を大量にかき血液中の水分量が不足すると血圧は下がるが、血液がいわゆるドロドロ状態になり、血栓ができやすくなる。それが高血圧ですでに動脈硬化を起こして細くなった脳の血管に血栓ができると脳梗塞を起こすのだという。

「つまり、高血圧は1年中注意だということです」(渡辺医師)

 やはり、減塩と水分摂取は励行した方がよさそうだ。だが、どうすれば減塩を実現できるのか。塩気の薄い食事にひたすら耐えるほかないのだろうか。

 渡辺医師が指導する減塩法「反復1週間減塩法」は、非常にシンプルかつユニークで、いわゆる「気がついたら薄味嗜好になっていた」作戦だ。渡辺医師は期間中、「限りなくゼロに近い塩分量」を患者に課す。塩、醤油、味噌、ソースなどの塩分を含む調味料、ハム、ソーセージ、干物、練り物、漬物など塩を含む食品は一切NG。塩分摂取量を可視化するために「蓄尿検査」も行う。しかし、実践するのは1週間だけ。それ以外は好きに食事していい。

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